さようなら缶入りピース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

缶入りピースの好きだった、親父がガンで死にました。

喉頭ガンで死にました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「缶入りピースを買って来い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

親父に言われ、子供のボクは、せっせとお使い、ゆきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タバコの煙を、我慢して、親父の、おしゃべり、聞きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから25年経ち、死ぬのが間近に迫ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死なないように、のどを切り、おしゃべり、できなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親父は、それでも、タバコをやめない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チューブを通す、喉にあいてる小さな穴から、タバコの煙が、噴きだしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指から力がなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライターを、ボクがかわりに、つけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起きる力がなくなって、タバコも自分で持てません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクが、かわりに、吸いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれて、はじめて、吸いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸いさしを、親父の口にさしこむと、息も絶え絶え、満足そうに、吸いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親父は、死体に、なりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクは、缶入りピースをたくさん吸って、煙を親父にあげました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親父の、生涯、最後の、タバコです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクは、ボクの生涯、最後のタバコを、吸い終わると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思いっきり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     
 
 
 
     

 

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